喰善 あべ

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(銀座)ここはなんといっても“おくどはん”で炊き上げるご飯が売りだ。
炊き上がる前のレアな状態「煮えばな」を頂き、炊き上がった米は、朝ごはんのごとく、めざしやお新香で頂く。L時カウンターの狭い店舗なので、この炊き上がるご飯が良く見える。

銀座のビルの4階に位置する11席の狭い店舗。和食店が地下やビルの上階にあるのは余り好きでは無い。しかし、銀座という土地柄、仕方ないのだろう。銀座5町目なのがギリギリ許容範囲である。5町目は「小十」や「近藤」といった老舗から「六雁」のような若いお店までが並ぶ、和食の王道エリアとも言える。
6丁目から8丁目にかけては、「ロオジエ」以外、飲食では出入りしたくないエリアだ。

「喰善 あべ」は、入り口を入って直ぐカウンター。そして椅子後ろの空間が狭いので、客の出入りが気になる。カウンターの幅が狭いので、正面の席だと、目の前で黙々と主人が料理しているので、ちょっと会話や所作を気にしてしまう。

気軽にお客さんに話しかけるような方ではなく、寡黙に調理し、時々静かに客席に目をやる。店主と目があったら慌てて逸らしてしまいそうな緊張感があって落ち着けない。

本来は調理するところを拝見したいものだが、ここでは右奥のエリアが最も落ち着くだろう。

シャンパーニュは、マルゲをオーダー。白はドメーヌ・ソガなどがあった気がする。日本酒含め、このクラスの和食としては、揃えの質は良いほうだ。

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料理に関しては、食器の状態がいただけない。食器の種類ということではなく、一部の料理は洗った後、皿が完全に拭き取れておらず、拭き残しの筋が見て取れる。これだけで食欲が少し萎える。料理の盛りもしっかりしているので、これは改善を求めたい。

味も悪くない。店主正面だったため、あまり写真を取らなかったが、美味しかった。

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八寸。盛り込みも綺麗。

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もう一つの売り、土瓶蒸し。土瓶蒸しは毎回食べ方を気にしてしまう。食べ方は諸説あるので、これまた目の前の店主の目を気にして、お抹茶を頂くように緊張した。

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問題は、ここの売りのご飯なのだが、最初にレア状態の「煮えばな」を一口だけ頂く。なるほどという感じだが、これで感動するようなことは無い。

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まずは白飯に、お新香やめざしなどで、朝ごはんのごとく頂く。

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その後に、じゃこをかけて頂く。

肝心のご飯だが、確かに美味しい、色艶も綺麗だし、歯ごたえもちょうど良い。

ただし、このくらいの美味しさは、良い米を使ってきちんと炊いている和食屋さんなら普通である。特別この釜で炊いたからという個性を感じる事はできなかった。

もしそれがあるならば、きちんと説明してほしかった。「歯ごたえが●●でしょ?」「甘みが××でしょ?」など、美味しさという抽象表現ではなく、“個性”として店主自身がこの釜に拘った違いを、自分の言葉で伝えて欲しいと思う。

じゃないと、単純にプロモーション材料でしかない。
ここの米は美味しいという口コミは広がるかもしれないが、本当の意味でのリピート客が増えていかないと思う。

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いかなる店でも、個性的な店は、その個性をもたらす意図が店主にあり、その意図が客に伝わるべきである。
奇抜なサービスや風変わりなインテリアなど、一目瞭然なものはそれでいいのだが、見た目ではなく調理結果として味の個性を出したいのであれば、それを伝える努力を見たい。
それでこそ、単純な味わい以外の事にも納得し、訪れる価値が倍増する。

なお、改めて場所について語ると、このブログでも触れる「炭火焼肉アズマン」「きた福」「ロオジエ」は7丁目。「久兵衛」や「たかせ」は八丁目になる。
場所柄、6時~8時頃の同伴の時間帯は、避けたほうが良いだろう。

いつも書いていることだが、客が店の空気を作り、その空気で印象がガラッと変わる。隣のテーブルの会話や香水の香り、洋服。あらゆるものが不快な要素をとなり得る。

それこそ、食時を「同伴」する相手にそういう気分を感じさせないように、予約時や訪問時には、状況に応じて座席の変更を依頼するなど、適度な配慮が必要だろう。